現在の病院は多くの問題を抱えていますが、病院にとっての課題点はなんでしょう。それは看護師に対してどんな影響を及ぼしているのでしょうか。まずは看護師不足の変遷をみ、そして現状について考えてみましょう。
【看護師不足の変遷】
これは全国どこの病院にも言えることですが、数十年まえから看護師は慢性的に人手不足の状況にあります。この変遷を時間をさかのぼって見てみましょう。
1960年代に看護師不足による看護師の過労が問題とされ、看護師の労働条件改善の為に国立病院の看護師たちによる人事院への「行政措置要求書」が出されました。1965年、人事院により、1ヶ月8回以内で複数人による夜勤体制が確保されたのです。規定はされたものの、これにより看護師の需要が高まり、大病院では規定を守ることができましたが、中小病院での看護師不足が深刻となりました。それでも、規定を反すると医療報酬が減るため、経営難に陥るという悪循環が出来上がったのです。
1985年になると第一次医療法改正がなされ、病院の自由な開業が規制されました。これは各都道府県で必要な病床数を換算し、その病床数以上の病院の開業を認めないというものでした。これによって、看護師不足の解消もされるとみなされました。しかし、この規定が施行されるまでに「かけこみ増床」現象がおこり、看護師不足はさらに深刻となったのです。
そして現在に至るまで看護師不足が続いている現状に対しては2006年の診療報酬の改定があります。これにより、今まで、診療報酬で認められている患者に対する看護師の人員配置は「患者10人に対して看護師1人」というのが最も厚い人員配置でしたが、 改定後は「患者7人に対して看護師1人」という配置となったのです。
【現状】
さて、2006年の診療報酬の改訂により、看護師の不足は増加しました。病院の病棟にはいわゆる「急性期型」と「療養型」の二つの種類がありますが「急性期型」が一般病棟と考えて良いでしょう。診療報酬は急性期型の病棟の方が高いので、多くの病棟がこの、急性期型を選択しました。これによって、長期入院患者(とくに高齢者)が病院から締め出され、行くあてのない状態に陥る問題も発生しました。
急性期型の病院は常に看護師を募集するような状態になり、そして、看護師の求職状況として、大病院に看護師が集まる傾向があったため、中小病院ではさらに看護師不足に悩む結果となったのです。